
職場が楽しくて仕方ない現役理学療法士のトリオです。
理学療法士を目指している方は、入職後やっていけるのだろうかと不安になっていると思います。たしかに理学療法士には向き、不向きがあるのは間違いありません。
しかし、不向きだからと言って、改善できない訳ではありません。私も初めは上手く行かないことばかりで、理学療法士の仕事が楽しくありませんでした。

私自身の経験や周りのスタッフをよく観察し、話し合った結果、理学療法士にとって有利な能力というのがはっきりと分かり、それらを習得しました。
もし「理学療法士に向いていない」「自信がない」「職場が辛い」等の悩みがある方は、以下の改善策を実行してみてください。理学療法士として押さえておきたい様々なテクニックやコツを網羅しています。
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コミュニケーション能力は最重要スキル
理学療法士は、患者様のすぐ隣にいて会話をし続けなければなりません。ゆえに理学療法士において最重要かつ必要不可欠な能力は「コミュニケーション能力」でしょう。

かと言って、理学療法士の中で“自分はコミュニケーション能力がある”と思っている人はほとんどいませんね。
みんなコミュニケーション能力に不安があるのです。だからこそしっかりとコミュニケーションの基礎を覚えておきましょう。説明していきます。
理学療法士は“接客業”
私の実習先のスーパーバイザーがよく仰っていたい言葉に「理学療法士は接客業」というのがありました。つまり、患者様はお客様です。失礼があってはいけませんし、要望に応えることは当然として、それ以上のサービスを提供しなければ喜んではくれません。
そのためには、相手に興味を持ち、何を欲しているかを敏感に察知できるようにしておくことが大切です。この心構えはコミュニケーションの基礎として持っておくとよいでしょう。
信頼関係(ラポール)の崩壊はトラブルの元
患者様からの信頼が失墜すると、もうリハビリは行えません。上長にクレームが届き、担当者の変更を言い渡されるでしょう。医療安全報告書を書くことにもなり、職場で肩身の狭い思いを強いられます。

私の経験からすると、知識や技術の高い理学療法士でも担当者変更の事例はありました。むしろ新人よりも確率としては多いです。臨床経験を積めば積むほど、態度が横柄になる人が多いので注意しましょう。
やりがちな“禁じ手”
具体的にどんなことをすれば、患者様に嫌われて、信頼を落とすのでしょうか。以下で説明していきます。
1.おじいちゃん、おばあちゃんと呼ぶ
患者様のことを、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と目の前で呼んでいる医療従事者は少なくありません。すぐに改めた方が良いでしょう。
高齢者になり、シワだらけになったとしても、その人の心はいつまでたっても若いままです。高齢者自身が体と心のギャップに戸惑っているのです。それに追い打ちをかけるように年老いた表現を向けるのは、心をとても傷つけることがあるのです。名字に敬称を着けて呼びましょう。
2.患者様そっちのけで他のスタッフ等と会話する
患者様の施術中に他のスタッフと私語をすることはやめましょう。患者様からすると自分のことが無視されているような気分になります。

私も施術中、スタッフに話しかけられて受け答えをしていると、患者様に「仕事に集中してください」とはっきりとお叱りを受けました。とても申し訳ないことをしました。
3.話を最後まで聞かない
どんな人でも自分の話は最後まで聞いて欲しいものです。すべてを言い切らないとスッキリできません。

話の途中で内容が分かった途端に、話を遮る理学療法士も多々いますが、とても残念なことです。すべて出し切れなかったモヤモヤを患者様は持ち続けてしまうでしょう。
それに、話の最後は予想とは違う内容だった可能性もあります。絶対に患者様の話は最後まで聞きましょう。
4.高圧的な態度
理学療法士の中には、患者様を見下した態度を取る人もいます。
例えば難聴の患者様も多いのですが、相手が聞き取れなかったら怒ったように大声で繰り返したり、また、動作指導などを理解してもらえなければ、ため息をついたり、早口でまくし立てたりという場合もあります。どれも患者様にとっては大きなストレスと恐怖になります。
そして、論破を試みる理学療法士も多いです。患者様の意見や考えを正そうとして、自分の知識を振りかざしますが、論破をしたところで患者様から感謝されることは100%ありません。ただただ、悔しく嫌な気分にさせるだけです。

論破をするよりも、むしろ患者様の意見がより広がるように優しく接してみましょう。すると患者様自身が知識の間違いに気づくこともあり、笑い合えたりします。
途切れない会話テクニック
患者様と1対1で向き合う理学療法士にとって、沈黙が続くことはお互いにとって少し気まずいものです。会話が弾み、相手が喜んでくれるすぐに使えるテクニックをご紹介します。
1.深いところまで質問する
誰しも自分に興味を持ってくれるのは嬉しいことです。例えば患者様が「農業をやっていた」と仰ったのなら、作物の種類や規模、誰とやっていたのか等、質問することは沢山あります。さらに「タバコを作っていた」と回答があれば、タバコはどんな特徴のある植物で、育てるのにどんな苦労があるのか等さらに深く質問することが出来ます。

もう少し進めていけば、誰にも言っていない苦労話や変わったエピソードなどを聞くことができるでしょう。
自分の深いところまで知ってくれている相手には気を許してくれます。気を許した相手にはさらに話を続けてくれるため、会話が途切れ難くなります。
2.自分の話をしない
患者様との会話中、自分の経験したことを話したくなることもありますが、グッと抑えて下さい。患者様は基本的には他人の話には興味がありません。患者様から質問された時でさえ、私たちの身の上話は軽く済ます程度で十分です。長話は退屈させてしまうリスクのほうが高いでしょう。

「話し上手は聞き上手」と昔から言われています。常に聞き手にまわることを意識しましょう。
3.とにかく褒める
患者様はなんらかの疾病があり、入院生活や予後に関して不安やストレスを抱えています。精神的に不安定な状態で、弱気になっていることがよくあります。
ネガティブな言葉を口にされる患者様も多いですが、どこか褒めるところを見つけて
- 「〇〇さんのここがすごいですね」
- 「本当に努力をしてきたんですね」
- 「心がやさしいですね」など、
能力や経験、性格などで、ちょっとでも良いと思った点は褒めてください。

褒められて嬉しくない人は実は存在しません。弱っている状況ならば、なおさら嬉しいのです。
4.相槌は「はひふへほ」

また、相槌が早すぎるのも要注意です。話を理解せずに生返事していると思われるので、相手の話の内容に適切な“間”をあけて相槌を打ちましょう。
5.話題は「木戸に立てかけし衣食住」
寡黙な患者様もいらっしゃいます。積極的に話してこない患者様に対しては、こちらから話題を振りましょう。効果的な話題が11個あります。
気候や季節の話
道楽(趣味)の話
ニュースの話
旅の話
天気の話
家族の話
健康の話
仕事の話
衣服・ファッションの話
食べ物の話
住まいの話
上記の頭文字を順にならべて「きどにたてかけし衣食住」となります。
一方で、「政治」「宗教」「野球」の話題はしない方が無難です。支持している政党、信仰している宗教、好きな球団を先に聞いておいて、その話に乗るぐらいならば大丈夫でしょう。間違っても自ら支持政党、信仰宗教、好きな球団を先に言ってはいけません。トラブルになり得ます。
6.ミラーリング・バックトラッキング
親近感を抱かせる方法に「ミラーリング」というモノがあります。“ミラー=鏡”からも分かるように、相手のしぐさや表情をマネするのです。
相手が腕を組めば、こちらも腕を組み、真剣な顔をしているのであれば、こちらも真剣な顔をする、というようなことです。それだけで、同じ立場で考えてくれる仲間だと思ってもらえるのです。
「バックトラッキング」というのはいわゆる「オウム返し」のことです。
患者様が「昔は貧乏だったけど、本当によく働いて、4人の子供を育てたんです」と言った場合、「よく働かれたんですね…!えっ4人も育てたのですか!」といったように、完全なオウム返しではなく、話の内容を切り取ったり、あるいは要約して言い返すと効果的です。相手からすると、この人はよく話を聞いてくれる人だと思い、さらに熱く語ってくれるでしょう。
信頼関係の築き方
上記までを実践するだけで、患者様と円滑なコミュニケーションをすることは可能だと思います。さらにワンランク上の“信頼関係”まで構築するには、以下のように、患者様を驚かせるようなパフォーマンスを見せる必要があるでしょう。
1.知らない単語を調べてくる
患者様が語る趣味や地名、時事等のお話で、こちらの知らない単語が出てきた場合、仕事が終わるとすぐに調べる習慣をつけておきましょう。
「昨日仰ってた〇〇〇、興味があったので調べてきました」というだけで相手は感動してくれます。自分の為にプライベートでも時間を割いてくれたんだな、と思わせたら勝ちです。大好きになってくれます。

私は「菊の育て方」「カナダのこと」「患者様の好きな童謡」などについて調べたことがあります。驚いたのちに、とても喜んでくれました。
2.疾患や治療方法の文献を調べてくる
医学的な知識をプライベートな時間を使って調べてくると、患者様は喜ぶと同時に安心してくれます。医学は常に進歩していることは、患者様も知っています。「最新の知識を仕入れてきてくれて、私のためにそれを使ってくれる」と思ってもらえるため、とても感謝されるのです。
3.退院後の生活を案じる
リハビリテーションで一番考えるべきことは、「この患者様は退院したらどんな生活をするのだろうか」ということです。
退院後、安心して生活ができるために、
- どのようなリハビリや運動指導
- 装具・補助具
- 住宅改修
- アフターサポート等…
を用意するべきかを考えることが最重要です。それらのことを、親身になって患者様と相談し、意見をすり合わせると、将来のことまで心配してくれる頼りになる先生だと感じてくれるのです。
4.心からの敬意を示し、自分の成長にもなったと感謝する
退院日。心から敬意と感謝を表しましょう。あなたの担当になることが出来て幸運だったと伝えましょう。そして、真剣にあなたと向き合うことで、自分自身が成長できたことも報告しましょう。きっと感激してくれます。
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ストレス耐性
医療従事者とストレスは切っても切れない関係でしょう。ストレスに耐える能力がある人は、理学療法士に向いていると言えます。
院内の業務は多忙を極める
理学療法士の仕事は患者様とのリハビリがメインではありますが、その他にも様々な仕事があります。
デスクワークとして、カルテ記載、目標設定記入、退院時指導作成、カンファレンスシート作成、計画書作成、廃用症候群シート記載、単位送信、電話対応、人事考課記入、業務日誌作成・閲覧、スタッフ間でのメール、勉強会発表準備etc。他にも掃除、各種委員会出席、研修、勉強会、装具作成・注文、住宅訪問、学生への指導、環境設定、Dr確認、上長報告、手指消毒etc。
日々のリハビリの目標単位数は18単位(1単位20分間)に設定されているところが多いと思います。18単位=6時間なので、残り2時間で上記の業務のいくつかをこなさなければなりません。

色々な業務が重なり多忙を極める日も少なくありません。その時のストレスはとても大きく感じます。
不条理なクレームと不可抗力のミス
どんなに最善を尽くしても、ミスは生じます。後になってこうしておけば良かったと反省することはできますが、ミスを完全になくすことは誰もできません。患者様からのクレームも避けては通れません。

患者様のただの勘違いであったとしても、言い訳は通用しないのがサービス業の世界です。そう受け取られてしまったこちらに非があると考えるしかないのです。
ミスやクレームは必ずありますので、引きずらず、しっかり反省して次に活かして深く悩まないようにしましょう。反省と切り替えを素早く行って、ストレスを溜めない人は、理学療法士として向いていると思います。
不機嫌なスタッフや変わり者のDr
院内スタッフ全ては、ひとつのチームです。理学療法士だけが医療従事者ではありません。医者、看護師、作業療法士、言語聴覚士、介護士、社会福祉士、臨床検査技師、清掃員、等々たくさんの職種が一丸となって働いています。

チームプレーがとても大切なのですが、和を乱すスタッフもたまに出くわします。
明らかに不機嫌で、挨拶も返さないスタッフがいると、こちらも気が滅入りますよね。また、医者は変わり者や高圧的な者も多く、一方的に振り回されたり、急に怒られたりして、こちらはすごくストレスが溜まります。
多種多様なストレスでも優しさを失わない
上記した内容の他にも様々なストレス要因が理学療法士にはあると思います。それでも、優しさだけは失わず、仕返しや復讐の心は忘れて、耐え忍ぶことが結果としてわが身を救います。
「怒りは自分に盛る毒」
インディアンのある部族の格言です。自戒も込めて。
体力に自信がある
理学療法士は体力も重要です。体力がなければ仕事が停滞してしまうでしょう。
移乗やトイレ誘導など肉体的な強さが求められる
麻痺や骨折などで、介助がなければ車椅子に乗り移ることや、トイレに行くことができない患者様が多々おられます。その介助を理学療法士もすることになります。体重の重い患者様や、麻痺の強い患者様を介助すると、どうしても肉体的な強さや持久力が必要となってくるのです。
基礎体力を鍛えておくと良いでしょう。
腰痛は付き物
理学療法士はリハビリ中に、中腰になることや、患者様や重いモノを支えることがあるため、腰痛が生じやすいです。腰痛になりづらい人は理学療法士として向いていると思います。
好奇心、探求心がある
好奇心、探求心のある人は教養豊かになり、患者様とのコミュニケーションを円滑にすることが出来ますし、様々な角度から物事を考えられるようになるため、治療にも活かすことが出来るでしょう。
豊富な教養と体験があると、より患者様の生活や悩みをイメージできやすくなり、患者様に必要なモノ(Needs)が何かを知ることが出来るようになるでしょう。Needsを的確に抽出できることは、優れた理学療法士には欠かせない能力です。
観察力がある人
観察力がある人は、物事の変化や、周りの状況のちょっとした異変に敏感に気づきます。

医療の現場では観察力の有り無しが、人命に直結する場合もありますね。
- 患者様の顔色や息遣いが普段と違っていたり
- 歩行練習時に障害物が転がっていたり
- リハビリ室の温度がいつもより少し暑かったり等々…
「いつもと違うこと」を感じられる能力があると、事故を未然に防ぐことが出来ますし、気が利く人だと思われて周りからも一目置かれる存在になるでしょう。
まとめ
理学療法士に向いている人というのは
・コミュニケーション能力に長けている
・ストレスに強い
・体力がある
・好奇心・探求心豊富
・観察力に優れている
改善するには
・高圧的にならない
・聞き手に回る
・知らない事はすぐに調べてくる
・怒りは捨てる
・自身の体力を強化する
・色々なことに興味を持ち、注意深く観察する
等々でした。
全てを実行するのは難しいかもしれません。
理学療法士に向いていないと思う人は、ひとつずつで大丈夫ですので、試してみてください。明るい兆しが見えてくるかもしれません。
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